ああっ。

 手袋をしたままの手を取られて、メイは慌てた。

 どのタイミングで外したらいいのか、よく分かっていなかったのに、それよりももっと、彼の行動の方が速かったのだ。

 しかし、さすがにカイトも気づいたらしく、はっと指輪を持った手を止めた。

 そして。

 二人、慌てて手袋を外す。

 それは、ブーケと一緒に脇に控えていた人に預けた。

 確かにリハーサルの時にも、こういう風にしなさいと言われていたのだが、すっかり忘れてしまっていたのだ。

 それに。

 ちらり。

 山ほどのカメラが、自分に向けられている。

 こんなに、たくさんのカメラに取り囲まれたのは、これが初めてだった。

 恥ずかしくてしょうがない。

 しかし、幸い彼女にはヴェールがかかっていたので、はっきりと顔を撮られることは―― あれ?

 そこで、思い出したことがあった。

 リハーサルでは、指輪の交換からヴェールを上げるように言われていたような気がする。

 しかし、それをするのはメイ自身ではなかった。

 彼に、上げてもらわないといけないのだ。

 覚えてる、よね?

 彼女は心配になりながらも、迫りくるカメラの山を怖がって、うまくそれを伝えられずにいた。

 大体、こういう環境で、どうやって伝えられるというのか。

 ようやく二人、手袋を外して、改めてもう一度向かい合う。

 そしてカイトは。

 おもむろに、彼女の手を掴んだ。

 やっぱり。

 彼は、リハーサルを覚えていなかった。