ああ、よかった。

 とりあえず、ハルコは胸をなでおろした。

 神父が、何とか場を静めて進行してくれたのである。

 まあ職業柄、非常に気は長いだろうから、いきなり式そのものが取りやめになる、などということは心配していなかったが。

 そういえば。

 自分たちも、あの場所で誓いの言葉を交わしたのだ。

 少し離れたソウマの方を見やると、ようやく新婦の父親役から、ベストマンの位置と表情に戻った彼が、軽く視線を合わせてくれた。

 やれやれ、と言いたげな表情だ。

 クスッ。

 その表情に、笑みが浮かび上がってくる。

 カイトほど激しくはなくても、ソウマだって嫉妬くらいするだろうに。

 お互いがお互い以外の人にも、つい優しくしてしまう性格のせいで、表面上は心配や嫉妬をしていないような素振りでも―― 実は、胸を騒がせていたということが過去に何度もあった。

 ソウマは、チョコレートをたくさんもらうタイプだった。

 それでも、ハルコが用意したものにだけは、特別の反応を返してくれた。

 誰にでも優しい表情がちょっと崩れて、困ったりあせったり、でも平静を保とうとしたり。

 だからこそ、自分に言い聞かせていたのだ。

 嫉妬する必要はないんだわ、と。

 でも、学校の裏庭で告白されているのを目撃してしまうと、その場を遠く離れながらも、気分が沈んだりしたのだ。

 優等生で、人にも優しい私。

 その内側では、ずっとソウマに胸を騒がせていた。

 初めて、屋根の上にいる彼を見た時から。