病める時も?

 貧しき時も?

 当たり前だ!!!

 リハーサルの時に、その誓いの言葉を聞いた時、カイトは馬鹿馬鹿しくてやってられないと思った。

 そんなことくらいで、自分が彼女を手放すなんて、決してないと分かっていたからだ。

 そして。

 自分がメイ以外の女に、貞節とやらを破るとも思えなかった。

 こんなに、心や身体をぶつけているのに、全然満たされないのだ。

 他の女にかまけているヒマなんか、カイトには全然ない。

 しかし。

 いざ本番になって言われてみると、リハーサルの時とは段違いだった。

 心臓に押し迫る誓いを求める声に、命を賭けた血判状を突きつけられているような気がしたのだ。

 神父の言葉自体は、穏やかな口調なのだが、カイトにはそう聞こえた。

 1箇条でも破ろうものなら、そのまま地獄の業火の中にたたき込まれる気がする。

 だが、カイトにとっての地獄は―― メイがいなくなることだった。

 彼女が、自分に微笑みかけないこと。

 抱きしめられないこと。

 その心が、離れていってしまうこと。

 どれか一つでもクリアされてしまったら、血の池地獄に針山地獄と、地獄巡りツアーが組めること間違いナシだった。

 そのツアーを、一度体験したことがあっただけに、もう絶対に何があっても、そんな事態にはなりたくなかった。

 大事にしてぇ。

 気持ちが逆巻く。

 荒れ狂う。

 オレを好きだと言ってくれと、熱い砂漠で渇望している。

 いつだって。

 本当に、いつだって。

 こんなに、彼女を求めているのだ。