夜。

 11時に、親の家に殴り込む。

「もう今日は遅いから、泊まっていったら? 何だったら、メイちゃんだけでも」

 などという母親から、何とか彼女を奪還して。

 車の中。

「写真を…見せてもらったの」

 一緒にいなかった時間を埋めるように、メイがしゃべり始める。

 どうやら、彼の実家での出来事のことらしい。

 写真?

 カイトは、眉を顰めた。

 ハルコやソウマに預けるよりは、まだ親の方がマシだろうと思って、彼はそっちを選んだのだ。

 しかし、どちらの夫婦にせよ、過去のカイトを知っていることは確かだった。

 どのくらいの過去か、ということで違うだけである。

 大学以降のことは、ソウマ夫婦の方が知っているだろうが、その前となると。

 クソッ。

 余計なことしやがってと、自分の両親を攻撃する。

 勿論、想像上のことだが。

「一枚…もらっちゃった」

 赤信号で止まった時―― 爆弾発言があった。

 なにー!?

 大慌てで彼女の方を見ると、大事そうにバッグを押さえているではないか。

 その中に、カイトの昔の写真が入っているというのだ。

「だっ、出せ!」

 こんな、恥ずかしいことはなかった。

 彼は、何とかそれを奪い返そうと。

 いや、もう最初から破り捨てる気だった。

 どんな写真か分からないが、どれにせよ耐えられそうになかったのだ。

「だめー!!!」

 バッグを隠すように、カイトより遠い側に持っていってしまう。