怒ったのではない。

 カイトだって慌てたのだ。

 丸くて無害だった陶器とは言え、いまはむき出しの剣山のようなものである。

 怪我をするかもしれないのだ。

「あ、でも…片づけないと」

 オロオロと、足元の破片とカイトの顔を見比べる。

 何で禁止されたのか、全然理由が分かっていないのだ。

「ホウキ、どこだ」

 彼女の方に近寄る。そして、素手以外で片づける方法を示唆した。

 あっとメイも気づいたらしく、パタパタと調理場の方に駆け込んだ。

「きゃあっ!」


 ガラガッシャーン!


 今度は、調理場の方から悲鳴と、いろんなものが落ちる音が聞こえるではないか。

 慌てて剣山を飛び越えて駆けつけると、金属のボウルやらフライパンやらが、床に散乱していた。

 勢い余って、そこらにぶつかったらしい。

 そして、本人は頭を押さえて座り込んでいた。

 最後まで、カランカランと回り続けていたボウルが、その光景の中でようやく止まる。

 それが、頭にぶつかったのか。

「あは…私ってドジだから…あの…痛くないの、全然」

 最初はそのまま座り込んでいたメイだったが、彼に見られていると分かるや、真っ赤になっていきなり立ち上がる。

 ぱたぱたと服のホコリをはたく。

 そして、散らばった道具を片づけようとするのだ。

 その身体を。

 カイトは、押しとどめた。

 分かりやすく言えば、おなかに腕を回して引っ張り戻したのだ。