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 メイの様子がおかしかった。

 土曜日の朝―― カイトが、白いセーターを着ている時だ。

 土曜日は、会社は休みだった。

 しかし、納期前には、休日も祝日も親の死に目もない。

 本当ならば、カイトは家に帰ってくる暇などなかった。

 明日が、納期なのだ。

 親の死に目はダメでも、結婚式ならいいのか。

 しかも、最終事前リハーサルとやらのために、彼は会社に行くことを禁止されてしまったのである。

 ソウマの手回しのいいことに、すでにチーフに話が回してあって。

『明日と明後日は、こっちのことは気にしないでください』

 と、昨日言われてしまったのだ。

 フザケんな!

 確かにここまでくれば、カイトの噛む噛まないは関係ないのかもしれない。

 しかし、このプロジェクトに、彼は最初から足を突っ込んでいるのだ。

 社長という仕事の関係上、すべての工程に関わるワケには行かなかったが、それでも関わった人間としての責任とか何とかくらい、カイトだって知っているのだ。

 だから、そのリハーサルとやらが終わったら、また会社に行くつもりだった。

 メイと一緒にいたいのはヤマヤマだが、それで仕事をおろそかにしていると、思われたくなかったのだ。

 自分のプライドもあったし、彼女の評価を落とすような気もする。

 そんなことを考えていた朝食時間。

 メイが、いつになくソワソワして。

 地に足が、ついていないというカンジだ。

 彼女がお皿を割るところなど、初めて見た―― 朝食の時の出来事だ。

「あっ、ご、ごめんなさい」

 大慌てで、割れた破片の中に手を突っ込もうとしたので、思わずカイトは。


「すんな!」


 怒鳴ってしまっていた。

 ビクッと、破片に触れる寸前で手が止まる。