「結婚式? 結婚するのか??」

 しかし、キズオの反応は、またも意外だった。

 驚いたように、その最後の単語に反応するのである。

 一体、うちの社長とどんな関係なのか。

「そうか…そりゃあよかった…」

 1人で何故か納得して、うんうんと頷いている。

「ちょっと、どういう意味! それは!!」

 これは、直感だった。

 キズオは、何か社長について知っている。

 おそらく、ハナの知らないことだ。

「ああ、いや何でもないぞ…それじゃあオレは帰るから。お休み」

 手早く、姉に別れのアイコンタクトを送るや、車に乗り込んでしまった。


「ちょっと、キズオ! 待てー!!!」


 真夜中だ。

 近所迷惑だ。

 にも関わらず、ハナは大声を張り上げた。

 絶対、おいしいことを知っているに違いない。

 あの態度は、怪しいにもホドがある。

 が、汚いオッサン車は、ばびゅーんと消えて行ってしまった。

 キーッッッッッ!!

 今日の男たちは、誰もかれも彼女を仲間ハズレにしようとする。

 ハナは怒りの顔のままで、キッと姉の方を振り返った。

「ケータイ!」

「え?」

「キズオのケータイ番号教えて! 今すぐ! ほら、早く! 早く!!!」

 チャットでご挨拶、どころではない話しになってしまった。

 しかし、おとなしいくせに姉は―― キズオの鼓膜を、最後まで守り通したのだった。