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 メイが、何か隠したことなんて、気にならない―― ワケがねぇ!!

 くそっ。

 昨日のことが、頭にしっかりとこびりついたまま、カイトは仕事場でバグ退治に眉を顰めていた。

 今頃になって、やたら細々したバグが、彼のところに届けられるようになっているせいで、余計にイライラが募っていく。

 よくもまぁ、こんなちっちゃいのを見つけたよな、というものまで出てきたのは。

 一重に。

「シャチョー!! ここ、ここ!」

 来た。

 カイトは、半目になった。

 応援部隊の切り込み隊長と、すっかり噂が高くなったハナである。

 うるさいから寄りつくなと、何度となく言っているにも関わらず、この女ときたら、姑よりも厳しい目でバグを探し出し、さも自慢げに持ってくるのである。

 まるで、『おっきなネズミを取ったの、見て見て!』という、ネコそのものだ。

『何で、オレんトコに寄ってくんだ!』

 たまたま近くにいたチーフに当たったら、彼は苦笑して。

『そりゃあシャチョーが、”コウノ”だからでしょう?』

 などと言った。

 別に、周囲の人間にひっついてもらいたくて、カイトは”コウノ”を名乗っていたワケではない。

 会社を興してからは、もうその名前は使わなくなったというのに、時々幽霊みたいに彼に忍び寄るのだ。

 昔の自分。

 まだ、メイに出会ったことのない時代の自分は、正直嫌いじゃない。

 いまよりも、もっと何でも出来たような気がする。

 しかし、足りなかった。

 何でも出来たかもしれないが、それは精巧な模型と一緒で、綺麗ではあるけれども動き出したりしなかったのだ。

 いまの自分は、思い通りにならない。

 だが、それでも確かに動いている―― メイを抱えてさえいれば、それが出来ることを知った。