何が、やっぱりなのか。

 話の前後が全然見えずに、メイはまばたきをしてしまった。

 脱衣所の中で、腕を放してくれたカイトは、今度はさっさと自分の残りの服を脱ぎ出す。

「きゃっ!」

 残っているものは、下半身だけである。

 直視できるはずがなく、彼女はぱっと目をそらした。

 ああでも。

 言わないと、言わないと。

「あ、あのね…さっきの」

 目をそらしたまま、メイが唇を開いた。

 もうその頃には全部脱ぎ終わったのか、カイトの足音がお風呂場の方へと向かっていた。

「無理して言わなくても、いい」

 押し殺したような声が、先手を打った。

 続きを言おうとした口を、彼女は池のコイのように空回らせる。

「言わなくていいから…来い」

 それだけ言うと、カイトはお風呂の中に行ってしまったのだった。

 えっと。

 一人脱衣所に取り残されたメイは、カイトの行動について分析しようとした。

 どういう意図があるのか、と。

 もしかして。

 さっき出てきたのは、一緒にお風呂に入ろうと、誘いに出てきてくれたのだろうか。

 結局。

 カイトは、何も聞こうとはしなかった。


 メイも―― いろんな意味で、しゃべれなくなってしまったのだった。