ようやくカイトは、彼女の方を見てくれたけれども、じーっと観察するような色をしていて、質問の答えを出そうとしている様子はない。

 いまメイが何を考えているのか、光に透かして見られているような気がして、ますま動揺してしまった。

「何でもねぇ」

 言い終わるや、カイトはきゅっと唇を閉じる。

 そして、またお風呂場の方へと消えてしまった。

 バタン、とドアが閉ざされる―― 彼女の目の前で。

 あ。

 そんなぁ。

 今度は、シュンとなる番だった。

 何でもないハズなどないのだ。

 あんなにメイは怪しかったし、それ以前に、何か外に用があるからわざわざ彼は出てきたに違いないのだ。

 なのに、どっちについても、何も言わずに戻って行ってしまった。

 怒ったのかもしれない。

 せっかく、前より近くなれたと思ったのに、また自分でそれを台無しにしてしまったのだろうか。

 そんなのは、イヤだった。

 確かに、セーターで驚かせたり喜んでもらいたかったりするけれども、何もこんな思いをしてまで隠す必要はないのだ。

 言おう。

 ちゃんと、誤解を今すぐ解いて。

 メイが、決意して一歩お風呂場の方に、踏み出そうとした時。

 バタン!

 また、ドアが開いた。

 上だけ脱いだ状態のカイトが出てきて、またも心臓がはじけ飛んでしまいそうになる。

「やっぱり来い!」

 ぐいっと。

 彼女は、腕を捕まれると引っ張られた。

 は?

 唖然としているうちに、脱衣所に引っ張り込まれるとドアが閉ざされる。