休日出勤をする気などなかった。

 ただでさえ、平日の仕事の時は、離れていなければならないのだ。

 ようやく仕事が、書類関係から開発の方になったからよかったものの、それでも6時になった瞬間、カイトはがたっとコンピュータの前から立ち上がってしまうのだ。

 後ろ髪が引かれないワケではない。

 こうしている間に、納期がじわじわと近づいてくる。

 すぐに、開発室は戦場の様相を呈してくるだろう。

 しかし。

 もう少しだけ。

 せめて、家に絶対メイがいるという、存在への安心感が得られるまでは、早く彼女に会いたかった。

 こんな気持ちであるということは、誰にも知られたくない。

 自分がどうかしたのではないかと、何度となく思った。けれども、その衝動を止めることは出来ないのだ。

 しかし、肝心の仕事をないがしろにすれば、彼女を食わせていくことさえ出来なくなる。

 その責任感については、はっきりと理解していた。

 前と違って、働くことに目的が出来た。

 前は、面白ければそれでよかった。

 けれども、これからは、メイを幸せにする一つの手段にしたかったのだ。

 だからカイトは、家でも会社と同じように仕事が出来るよう―― 必要な機材の一部を持ち帰ってきたのだ。

 まあ仕事のことは、今は置いておくとして。

 週末については、メイに全部くれてやっても惜しくない、ということだ。

「何かあったのか?」

 しかし、見えないことがある。

 その理由だ。

 週末の半日を、彼女はいったい何に使いたいのかということを、まだ聞いていなかった。

「あ、忙しいならいいの…お仕事で疲れてる休みの日だし」

 カイトの質問を、どう取ったのか。

 彼女は、あわてて両手をパタパタ振って、今の話をナシにしてしまおうとした。


 そうじゃねぇ!


 ダンッ、と。

 あわや、食卓を拳で叩きそうになる。

 すんでで、踏みとどまった。