お墓まで。

 バスと電車を乗り継いで。

 きっと、夕方前には帰ってこられるだろう。

 ホウキを持って、せめて途中で綺麗なお花を買って。

 メイは、頭の中でいろんなことを渦巻かせていたが、まだ顔を上げられないでいた。

 カイトの返事は、まだない。

 何か問題でもあるのかと、不安になって覗き見ようと思ったら。

「オレだ…」

 いきなり、予測外の声が聞こえて驚いた。

 前後の脈絡が、全然ない言葉だったのだ。

 慌てて顔を上げると、カイトはケイタイをかけていた。

 急ぎの電話でも入ったのだろうか。

 ぽかんとしたままカイトを見ていると、彼の口が信じられないことを言った。

「今日はちょっと遅れる。急用があったら、ケイタイを鳴らせ」

 それだけだった。

 言い終わるや通話を切って、懐にそれをしまうのだ。

 え? え???

 豆鉄砲をいきなり食らってしまって、オロオロしてしまう。

 きっと電話の先は会社だろう。

 そして、遅刻すると告げたのだ。

 理由なんて、一つしかない。

 メイの思い過ごしでなかったら、それはきっと、『一緒に墓参りに行く』ということ。

 ううん、そんなハズは。

 だってカイトは今、とても忙し――

「用意しろ…」

 思い過ごしなんかじゃなかった。

 カイトが、まっすぐに彼女を見て、そう言ったのだから。