「あの…お…お墓参りに行きたいの…えっと…お父さんの」

 言った!

 その言葉だけで、呼吸が乱れてしまった。

 これまで、父親についてきちんと話したことは、ほとんどなかったような気がする。

 それを、今更ながらに改めて言うのは、何だか恥ずかしかった。

 けど。

 子供の頃から、自分を一番愛してくれた人を、いままで彼女はずっと放っておいてしまったのだ。

 確かに、いろんなことがあった。

 環境も激変した。

 でも、いまはとても幸せだし、前より少しは環境も落ち着いている。

 そして何より、神父様のお話を聞いたら、いてもたってもいられなくなったのだ。

 自分が、これから幸せになることを、いや、今でも既に幸せであることを報告したかった。

 そうすれば、お父さんはきっと喜んで安心してくれるだろう。

 いままで来なくてごめんね、も。

 そして、近所のお世話になった人に、直接招待状を手渡してこようと思ったのだ。

 せっかく住所は書いたし、切手も貼ったのだけれども、ちゃんと顔を見て話がしたかった。

 学生時代の友人は、会社などに行って不在だろうが、きっと魚屋さんのお店は開いているはずだ。

 お墓自体は、ちゃんとある。

 母親が早く亡くなっていたせいで、その時に買ってあったのだ。

 いまは仲良くそこで眠っているはずだが、きっとそれでも娘のことは心配してくれているだろう。

 親どころか、誰にも言えないような色んなことが、カイトとの間に起きた。

 悲しいこともあった。

 でも、心が通じあえてからこっち、驚くことは山ほどだったけれども、本当に悲しいことは何もなかった。

 そういうものから、全部カイトが守ってくれたような気がする。

 カイトにも、悲しいことが近づかないように、メイも守りたかった。