●60
昨日の夜から、ずっと考えていたことがあった。
結婚講座の話ではないが、神父様の言葉で、自分がしなくてはならないことを思い出したのだ。
朝。
朝食の時に切り出そうとしたが、タイミングが見つけられずに、どんどん後延ばしになってしまう。
会社に出かけるために、彼が玄関の前まできた時―― ここが、最後のチャンスだった。
ちゃんと言わなきゃ。
ぎゅうっと、抱きしめられた後。
「あの……ちょっと、今日出かけてきていい?」
離れ際に、小さく呟く。
こういうことは、どう切り出したらいいのかよく分からない。
多分、カイトのことだから、『ダメだ』とは言わないだろう。
彼女にとっては、少し遠出になる。
ちょっとそこまでお買い物とは、性質が違うものだ。
ぱっと、カイトの表情が曇った。
しかし、それは否定を表している表情ではなかった。
そうではなくて、どうしていきなり出かける許可を求めるのか、分かっていないようである。
ワケを聞きたそうだ。
彼の無言から、色んなものを感じたメイは、理由を説明しようと思った。
「あっ、あのね…」
しかし、あんまりゆっくりしゃべっていると、彼の出勤が遅れてしまう。
急いで要点だけ伝えようと思ったのだが、やっぱり舌がうまく動かない。
「あのね…その…お……」
じっと見られ続けるのが恥ずかしくなって、彼女はうつむいてしまって。
それでも、まっすぐな視線を感じて、落ち着かなさを増幅させるばかりだった。
ますます、舌がもつれる。
昨日の夜から、ずっと考えていたことがあった。
結婚講座の話ではないが、神父様の言葉で、自分がしなくてはならないことを思い出したのだ。
朝。
朝食の時に切り出そうとしたが、タイミングが見つけられずに、どんどん後延ばしになってしまう。
会社に出かけるために、彼が玄関の前まできた時―― ここが、最後のチャンスだった。
ちゃんと言わなきゃ。
ぎゅうっと、抱きしめられた後。
「あの……ちょっと、今日出かけてきていい?」
離れ際に、小さく呟く。
こういうことは、どう切り出したらいいのかよく分からない。
多分、カイトのことだから、『ダメだ』とは言わないだろう。
彼女にとっては、少し遠出になる。
ちょっとそこまでお買い物とは、性質が違うものだ。
ぱっと、カイトの表情が曇った。
しかし、それは否定を表している表情ではなかった。
そうではなくて、どうしていきなり出かける許可を求めるのか、分かっていないようである。
ワケを聞きたそうだ。
彼の無言から、色んなものを感じたメイは、理由を説明しようと思った。
「あっ、あのね…」
しかし、あんまりゆっくりしゃべっていると、彼の出勤が遅れてしまう。
急いで要点だけ伝えようと思ったのだが、やっぱり舌がうまく動かない。
「あのね…その…お……」
じっと見られ続けるのが恥ずかしくなって、彼女はうつむいてしまって。
それでも、まっすぐな視線を感じて、落ち着かなさを増幅させるばかりだった。
ますます、舌がもつれる。