メイなら、愛されても当たり前だろう。

 しかし、カイトはどちらかというと、憎まれっ子の方だった。

 そんな彼に向かって、何てことを言うのか。

 憎まれっ子は、誰からも愛されないとか、そういうことを言っているのではない。

 世の中には、物好きがいろいろいるものだし、別段イヤでもない相手を、無理に邪険にする必要もなかった。

 ただ。

 無償の愛とやらは、カイトは苦手だ。

 だから親の愛を、素直に受け入れられない。

 けれども、メイとの、その形はちょっと違った。

 無償じゃない。

 自分を渡すと同時に、彼女が欲しかった。

 一方通行の、片思いだって構わないとか―― そんなことは、わずかも思わない。

 ずっと欲しかった。

 最初から、見返りを求めた気持ちなのだ。

「オレは…あんま、そういう言葉は得意じゃねぇ」

 ぐにゃぐにゃと、口の中で複雑な思いを練り込みながら、カイトは唸るように呟いた。

 国道の広い道は、まっすぐで。

 そして、ずっとずっと遠くの信号まで青いのが分かる。

 視線は、一番遠くの信号機に向けたまま。

「けど…ホントに、それがあるってことだけは………分かった」

 ガラじゃねぇ。

 言い終わった後に、戒めるように奥歯を強く噛みしめながら、カイトは恥ずかしさに顔を歪めた。


 でも、愛はあった。


 愛は―― 助手席に潜んでいた。