何かもう。

 すごく、熱い人。

 何度となく、それを驚きとともに思ってしまう。

 あんまり、その記憶に捕まってしまったために、やかんのお湯が沸騰したのにすぐには気づけなかった。

 はっと振り返って、ガスを切る。

 そして、カイトのためにコーヒーをいれる。

 彼はいま、2階の部屋で仕事をしているはずだった。

 仕事が忙しいのは、相変わらずのようだ。

 なのに、毎日定時に帰ってきてくれる。

 多分そのせいで、いま家で仕事をしているのだろうが。

 でも、それはすごくメイにとっては嬉しいことだった。

 仕事に没頭されて構ってもらえなくても、すぐ側にいてくれるだけでよかった。

 本当は、それさえも物凄くゼイタクなことのように思える。

 一緒に―― いられること。

 その事実だけでも、ドキドキしながら。

 メイは、コーヒーと紅茶のマグカップが乗ったトレイを持って2階に向かった。

 お仕事の邪魔をしないように。

 そっとドアを開ける。

 背中が見えた。

 いままでノートパソコンがあったところに、別の大きなパソコンが置かれている。

 その周囲にも、彼女の理解できないようないろんな機械が置いてあって。

 足下に這うケーブル類が、まるで大きな川のようだった。

 会社から持ち帰ってきたというそれは、ずいぶん大がかりな仕掛けに見える。

 これから掃除をする時、かなりその周辺は緊張してしまうこと間違いナシだった。

 うっかり壊してしまいそうで怖いのだ。

 そ。

 音を立てないように緊張しながら、彼女はテーブルのところにトレイを置く。

 集中しているのだろうか、カイトの視線が追いかけてくることはなかった。