『何をしてるんだ!』

 着信するなり、ケイタイからはソウマの強い声。

 2人だけでは、いろいろ不都合があるに違いないので、打ち合わせには同席すると言っていたのだ。

 カイトには、ただのデバガメ根性にしか見えなかったが。

 現地集合だったのに、一向にカイトたちはこない。

 きっと、さっきからさんざん電話をかけつづけていたのだろう。

 彼が、ベッドの中で憎み続けるほど長く。

「今日は、行かねぇ…勝手に何でも決めろ」

 不機嫌な声で、パジャマの上着に袖を通した。

 他に身につけているのは、下着だけだ。

 だが、机のところに長居をする気はなかった。

 毛布の中で、わたわた慌ててパジャマを探している彼女の元に戻り始める。

 しかし、その毛布がピタリと動きを止めた。

 そぉっと、驚いた顔を隙間から覗かせる―― きっと、さっきのカイトのセリフが、予想外のものだったのだろう。

 もう、今日はどこにも行かねぇ。

 カイトは、ケイタイを取る前に、既にそう決めてしまっていた。

 昨日まで。

 我慢して我慢して、本当に身体に悪いほどの我慢をしたのだ。

 その1週間分のストレスは、たかが一夜で精算出来るものではなかった。

 しかも。

 ムッ。

 カイトは、更なる不機嫌を募らせた。

 しかし、とりあえずは電話の相手の方から、先に片づけなければならなかった。

『ほぉ…来ないつもりか…本当にそれでいいんだな?』

 覚悟は出来ているんだろうな、という意味を言外に含んでいる。

 要するに、ソウマたちで勝手に決めてもいいのか、と脅しているのだ。