はぁ。

 また、ため息をついた。

 そんな時だった。

 階段を登ってくる音がした。

 えっ?

 メイは、驚いた。

 明け方のこんな時間に、一体誰が二階に来るというのか。

 もしかして、またカイトからの電話が入って、シュウが呼びに来たのだろうか。

 彼女の中で、いろんな思考が巡る。

 しかし、とりあえず編みかけのセーターを紙袋に押し込む。

 クローゼットまで行く時間はないので、ソファの陰に隠して立ち上がった。

 足音が近づく。

 心臓を高鳴らせながら、彼女は、『まさか、そんな』と心の中でつぶやいていた。

 足音を覚えている。

 この、ちょっと強めの足音を。

 本当は、車の音も聞こえていた。

 しかし、耳が最初から違うものなのだと決めつけていたので、彼女に意識を向けさせなかったのだ。

 ガチャ。

 ノックもなく、ドアが開く。

 朝の、5時45分。

 カイトが、帰ってきた。

 ついている明かりに少し驚いて、それからソファの方にいるメイにまた驚いて―― しかし、表情には明らかに疲労と睡魔が見えた。

 驚いたのは、メイの方だ。

 帰れないのでは、なかったのか。

 こんな明け方に帰って来るなんて、どうかしたのだろうか。

 カイトは、何故彼女が起きているかなど、問いかけようとしなかった。