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 また―― 夜が来る。

 オオカミ狩りもできないまま、カイトは彼女を抱えて眠る。

 眠る?

 カイトは、即座に疑問を覚え否定した。

 違う。

 横になっているだけだ、と。

 昨日も、結局眠れないままで。

 朝方うつらうつらしたと思ったら、もう起きる時間になってしまった。

 確かに、納期前は会社で徹夜なんかをすることが、これまでしばしばあった。

 だから、少々の睡眠不足くらい、カイトは平気だった。

 しかし。

 これは、種類が違う。

 ただ、仕事に打ち込んでいて朝を迎えるのとは、精神的な疲労度が段違いだ。

 時計の秒針の音が、くっきりと聞こえるほど静かな中、メイの息づかいと柔らかさを感じながら、ただ横になっていなければならないのである。

 安心したように眠っている彼女を、それでも手放せないまま、彼はため息をついた。

 自分とは、全然違う生き物と一緒に生活するということは、こんなにも不意打ちなことが次から次に起きるのか。

 メイに、自分の身体のことを告白されたのが、土曜日のことだった。

 土、日、月。

 カイトは指折り数える。

 いわゆる、彼女は3日目ということになった。

 彼は、女性の生理について、詳しいワケではない。

 小学生の時にあった性教育の話なんて、これっぽっちも覚えていなかった。

 あとは、いろんなメディアからの耳知識だけである。

 それらは、どれも正確な表現ではなかった。

 だから。

 彼女が一体何日間、その症状に拘束されるのか、よく分からなかったのだ。