かと言って、一人で起きているのもつまらないし、うるさいと疲れているカイトを起こしてしまうかもしれない。

 おとなしく、彼の横にもぐりこもうとベッドに近づいた時。

 ばさっと。

 え?

 メイは、そこで立ち止まった。

 布団が、いきなりめくられたのだ。

 彼女が近づいてきた方の部分が。

 カイトを見ると。

 彼はあおむけに横たわっていたけれども、その目は開いて天井を見ていた。

 眠っていなかったのである。

 無言だったけれども、『早く入れ』と言っているような態度。

 パッとメイは表情を明るくした。

 何て現金なんだろう。

 こんな、ちょっとした優しさが、すごく嬉しくてしょうがなかった。

 さっきのことを、もう何も気にしていないのだと、教えてくれてるような気がする。

 彼の匂いのするベッドにもぐりこむ。

 布団をきちんとかけるのを待っていたかのように、カイトは電気を消した。

 何て安心する匂い。

 メイは目を閉じて、その巣の匂いを感じた。

 そうなのだ、ここは巣なのだ。

 ほかのどこでも得られない、カイトの体温が残る場所。

 今日は。

 ちょっと離れてしまっているけれども。

 それは寂しいが、ゼイタク過ぎだ。

 この匂いが、側にあるだけでいいではないか。

 ほんのしばらくの辛抱なのだから。

 お風呂場で考えた時よりも、もうちょっと前向きで安らかに、そう言い聞かせることが出来た。

 やっぱり、側にいる時と離れている時だと、側にいる時の方が、気持ちの針は段違いに幸せの方に近づくのだ。