だから、寝てろつっただろうが。

 複雑な気持ちで、それを思う。

 寝ていて欲しい気持ちと、会いたい気持ちが交錯しているせいで、その結論は、いまだにきちんと出ていない。

 なしくずしに、彼女が起きているのを容認している形になっていた。

 おかげで都合のいい時だけ、さっきのように、『だから寝てろ…』云々ということになるのだ。

 じっと寝顔を見つめていてもよかったが、いつまでも彼女をこんなところに寝かせるワケにはいかない。

 カイトは一度ベッドを見て、それからメイを見た。

 うっ。

 物理的に、彼女を抱えていかなければならないだろう。

 それがイヤなのではない。

 色々、思うところがあったのだ。

 途中で、メイが目覚めてしまったらとか、自分のガラじゃない、とか。

 そんな邪魔な考えも、結局カイトは踏みつけにした。

 ここでも、自分の甲斐性が試されているような気がしたのだ。

 好きな女一人、抱き上げてベッドに運べない男―― そのレッテルは、あまりに許せなかった。

 ガッガッ!

 変に気負ってしまって、歩き方が乱暴になる。

 まずカイトは、ベッドの方に向かったのだ。

 布団をばっとめくって、彼女を寝かせる場所を作った。

 珍しく、先のことを予測できた自分に悦に入りそうになるが、しかしそれはあくまで前菜である。

 メインディッシュは。

 ゴクリ。

 メイの目の前に立つ。

 無防備に眠る彼女の姿は、本当にカイトが触れていいのか、一瞬戸惑うくらいで。

 触れていいに決まってんだろ!

 自分を奮い立たせる。

 しかし、その奮い立ったエンジンの速度とは反比例して、触れる指はそっと、という強さになった。