しかし、理由はそれだけじゃなかった。

 確かにその教授との折り合いも悪かったのだが、根本的な問題もあったのだ。

 勉強する内容が、退屈だったのである。

 それなら、高い学費を出して学校に行かなくても、自分の好きな道を極めた方が、よっぽど人生においては効率的なような気がした。

 あっさり大学を中退して、彼女はコンピュータの道に入ったのだ。

 ちなみに1号と2号は、まだ大学生だ。

 楽しそうだが、別に羨ましいとは思わなかった。

 高校時代からその道に目覚め、ハナの部屋にはコンピュータが5台、ところ狭しと並べたり積まれている。

 LANでつなぎ、周辺機器も色々つないでいる。

 その全体が、サイバーでカオス的だったので、『フランケン』という総称で呼んでいた。

 つぎはぎなクセに、何か可愛いじゃん、というところだ。

 CGやプログラムにも目覚め、自分からしてみれば、かなり『使える女』になったつもりだった。

 となると、この才能を生かせる会社に殴り込みである。

 ハナは、F・カンパニーと鋼南電気の順で殴り込んだ。

 どちらも新規で募集していたワケではなかったが、彼女は自作ゲームを持ち込みして、自分を売り込んだのである。

 F・カンパニーの方は、社長自らご登場で、何だか分からないことをベラベラしゃべられた。

 でも、彼が最初に挨拶のように、女であることをホメたのが気に入らなかった。

 自分が女であることはイヤではないのだが、こうも才能の評価より先に、女性であることを口にされると、面白くないのである。

 鋼南電気の方は、誰もいない部屋に通された。

 面接官さえ、いないのである。

 どういう意味かと思っていたら、持ち込んだ作品だけ奪われて―― 待たされること15分。

 眼鏡でのっぽの男が現れて、作品を返しながら『いつから出社出来ますか?』と聞いた。

 あとで、彼は副社長であることが分かったのだ。

 気に入った。

 ハナは、ニッと笑った。

 味も素っ気もない試験ではあったが、一番気に入る試験だった。