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 朝礼で、チーフが言った。

「第一開発チームが、これから本格的に忙しくなりそうですので、うちのチームからも応援を出そうと思いますが……」


「はいはいはいはい!!! 私! 私、行きます!!!!」


 大きな声で、はっきりと。

 手まで挙げて主張すれば、気づかれないはずもなかった。


    ※


 やったー! ラッキー!!!!

 彼女は、廊下を飛び跳ねるように歩きながら、第一開発室の方に向かっていた。

 入社1年目で、こんな幸運が回ってくるなんて。

 そこら中の人たちを捕まえて、くるくる回ったり踊ったりしたいくらいだった。

 彼女の名前は―― ハナ・トリカイ。

 昔からの知り合いは、彼女のことを『トリカイ3号』と呼ぶ。

 何で3号かというと。

 彼女には、姉妹がいるのだ。

 正確に言うなら、三姉妹である。

 年はひとつずつ違うのに、どんな遺伝子のいたずらか、三人とも見た目だけは異様にそっくりなのだ。

 栗毛に、黒というより濃紺に近い瞳。

 しょうがなく、髪型で見分けられるようにしている。

 年齢が下にいくに従って、髪が短くなっていくのだ。

 その三姉妹の中で、一番年が下で髪が短いのがハナだった。

 上から、ユキ、ツキ、ハナ。

 トリカイ家の「雪月花」と呼ばれた方が、風情があっていいのに。

 何で、3号。

 ぷんぷんと、その事実に怒りまくる彼女は、とてもとても気が強い。

 どのくらい気が強いかと言うと、入った大学で教授と一悶着やらかして、とっとと退学してしまったくらいだ。

 だって、あの高慢ちきの教授、ムカつくんだもん。

 名前は何と言ったっけ、アカイだかアオイだか。

 大学まで入って、どうしてあんな生活指導みたいな男に捕まって、説教されなければならないのか。