「今日はね…」

 そんな風に、言葉を始めるのは、昨日の夜のせいだろうか。

 何かしゃべれと言ったのを気にしていたのか、何も言わなくてもおしゃべりとやらを始めてくれた。

 ただし、内容は遊びにきたというハルコの話だったので、そこまで彼を上機嫌にさせなかったが。

 でも、彼女が来たというのなら、結婚式に関係する話もいろいろあったに違いない。

 しかし、あえてその話題を出さないようにしているようだった。

 式の話をしたら、カイトが不機嫌になるとでも思っているのだろうか。

 だが、それはあながち間違いではないので、おもしろくなかった。

 正確に言えば、不機嫌になるというのとはちょっと違う。

 落ち着かなさが、倍増になるのだ。

 なまじ、右脳活動が活発な人間だけに、妙な映像が山盛りで押し寄せてくる。

 あの、白くてライトアップされた世界を想像する。

 ハルコとソウマの結婚式に呼ばれたことがあるせいで、妙に具体的に想像できるのだ。

 がーっっっ!!

 カイトは心の中で吠えた。

 あの気色の悪い儀式の数々を、今度は自分がしなければならないのである。

 しかも、タキシードなどを着せられ、見せ物に。

 ぞーっっっっっ。

 背中を逆なでるような、ゾブゾブがはい上がってくる。

 こういう準備期間が、1ヶ月でもあるということは、カイトにとっては不幸なことだった。

 相手が。

 ちらと、顔を上げてみる。

 相手が彼女でなければ、絶対に何が何でも拒否したに違いないのに。

 ここまでカイトに譲歩させられる存在が、ほかにいるだろうか。

 その事実が、イヤなワケではない。

 その事実があるということを、他の連中に知られることがイヤなのだ。

 これくらいでめげていて、本当に当日大丈夫なのか。


 忍耐の限界に、挑戦する話になってきたようだ。