「えっ!」

 あのマグカップを両手で持っていた彼女は、すごく驚いた顔で止まった。

「何かって…何?」

 驚いた顔のまま、おそるおそる聞かれる。

 別に、誰も怖い話をしろと言っているワケではないのだ。

 普通に生活をして、普通に感じたことでも何でも―― 彼女を、もっと知りたいだけなのだ。

「何でもいい」

 お得意の天気の話でも、この際、今日の指輪とかハルコの話だっていい。

 本当は、かなり有り難くはないけれども。

「え、そんな…いきなり言われても、何も」

 わたわたとしながら、メイは真っ赤になってしまった。

 なぜ、そこで赤くなるのか。

 まあ、確かに「これからおまえの話を聞くから、さあしゃべれ!」という環境で、一人ペラペラしゃべり出せる人間には見えなかったが。

 すっかり、照れてしまったようである。

「えっと…それじゃあ…教えて? いま、どういうゲーム作ってるの?」


 ガッシャーン!!!


 確かに。

 確かに彼女はしゃべった―― しかし、それは疑問の形で。

 カイトを話題に巻き込む内容だったのである。

 誰が、オレに話を振れと言ったー!!!

 おしゃべりなんか大の苦手のカイトに、何てことをするのか。

 希望通りどころか、カウンターパンチである。

「あっ、やっぱり発売前だから、ダメよね…秘密の秘密で作ってるんだもんね」

 前に住んでたところの近所の子が、すごくゲームが好きで。

 お?

 カイトの表情を、勝手に解釈をしたメイは、何故それに興味を持ったかをしゃべり始めてくれたのだ。

 結果オーライである。