●
ズボンの方は、毛布の間に紛れていたけれども、上着の方はベッドから落ちていた。
捜索にいつもより時間がかかったせいで、パジャマを着込み終わる頃には、カイトはバスルームから出てきてしまった。
枕元の明かりだけなので、はっきりとは見えなかったが、ざっとシャワーでも浴びてきたのだろう。
そんなカイトが、近づいてくる。
「このまま会社に行く…おめーは…寝てろ」
髪からは水滴。
とりあえず着た、という風にしか見えないバスローブ。
「あっ、でも朝ご飯…」
すぐ用意するから。
彼女が、慌ててパジャマのまま調理場の方に向かおうとすると、その腕は掴んで止められた。
カイトの手が濡れているのが分かる。
「いい…昨夜の、食ってねぇから」
それを言う時の声が、まるでメイに対して悪いことをしてしまった、みたいな風に聞こえた。
要するに彼は、昨日の夕食を食べて出勤するから、何もしなくていいと言っているようだ。
「あっ、それじゃあ温めるから…」
一晩中、寒い調理場に置いていたのだ。
何もかも、冷凍室に入れていたような騒ぎになっているだろう。
まだ1月なのだ。
カイトが自分でご飯をよそって、電子レンジでおかずを温めなおし、お茶を入れて―― とてもじゃないが、想像つかない。
何となく、おかずだけを冷たいままかじって、出かけてしまいそうな気がした。
「いい!」
しかし、彼はメイにそのわずかな仕事さえさせてくれないかのように、拒否をした。
「いや!」
反射的に、彼女は自分が強い声を出してしまったのに気づいて。
自分でもびっくりした。
ぱっと、掴まれていない方の手で、自分の口をふさぐ。
カイトも、驚いた顔をしていた。
ズボンの方は、毛布の間に紛れていたけれども、上着の方はベッドから落ちていた。
捜索にいつもより時間がかかったせいで、パジャマを着込み終わる頃には、カイトはバスルームから出てきてしまった。
枕元の明かりだけなので、はっきりとは見えなかったが、ざっとシャワーでも浴びてきたのだろう。
そんなカイトが、近づいてくる。
「このまま会社に行く…おめーは…寝てろ」
髪からは水滴。
とりあえず着た、という風にしか見えないバスローブ。
「あっ、でも朝ご飯…」
すぐ用意するから。
彼女が、慌ててパジャマのまま調理場の方に向かおうとすると、その腕は掴んで止められた。
カイトの手が濡れているのが分かる。
「いい…昨夜の、食ってねぇから」
それを言う時の声が、まるでメイに対して悪いことをしてしまった、みたいな風に聞こえた。
要するに彼は、昨日の夕食を食べて出勤するから、何もしなくていいと言っているようだ。
「あっ、それじゃあ温めるから…」
一晩中、寒い調理場に置いていたのだ。
何もかも、冷凍室に入れていたような騒ぎになっているだろう。
まだ1月なのだ。
カイトが自分でご飯をよそって、電子レンジでおかずを温めなおし、お茶を入れて―― とてもじゃないが、想像つかない。
何となく、おかずだけを冷たいままかじって、出かけてしまいそうな気がした。
「いい!」
しかし、彼はメイにそのわずかな仕事さえさせてくれないかのように、拒否をした。
「いや!」
反射的に、彼女は自分が強い声を出してしまったのに気づいて。
自分でもびっくりした。
ぱっと、掴まれていない方の手で、自分の口をふさぐ。
カイトも、驚いた顔をしていた。