ズボンの方は、毛布の間に紛れていたけれども、上着の方はベッドから落ちていた。

 捜索にいつもより時間がかかったせいで、パジャマを着込み終わる頃には、カイトはバスルームから出てきてしまった。

 枕元の明かりだけなので、はっきりとは見えなかったが、ざっとシャワーでも浴びてきたのだろう。

 そんなカイトが、近づいてくる。

「このまま会社に行く…おめーは…寝てろ」

 髪からは水滴。

 とりあえず着た、という風にしか見えないバスローブ。

「あっ、でも朝ご飯…」

 すぐ用意するから。

 彼女が、慌ててパジャマのまま調理場の方に向かおうとすると、その腕は掴んで止められた。

 カイトの手が濡れているのが分かる。

「いい…昨夜の、食ってねぇから」

 それを言う時の声が、まるでメイに対して悪いことをしてしまった、みたいな風に聞こえた。

 要するに彼は、昨日の夕食を食べて出勤するから、何もしなくていいと言っているようだ。

「あっ、それじゃあ温めるから…」

 一晩中、寒い調理場に置いていたのだ。

 何もかも、冷凍室に入れていたような騒ぎになっているだろう。

 まだ1月なのだ。

 カイトが自分でご飯をよそって、電子レンジでおかずを温めなおし、お茶を入れて―― とてもじゃないが、想像つかない。

 何となく、おかずだけを冷たいままかじって、出かけてしまいそうな気がした。

「いい!」

 しかし、彼はメイにそのわずかな仕事さえさせてくれないかのように、拒否をした。

「いや!」

 反射的に、彼女は自分が強い声を出してしまったのに気づいて。

 自分でもびっくりした。

 ぱっと、掴まれていない方の手で、自分の口をふさぐ。

 カイトも、驚いた顔をしていた。