袖から、完全に手が出ないのだ。

 よぉく、その布を見る。

 色は。

 白だった。

 それはパジャマではなく、ぐしゃぐしゃになったカイトのワイシャツだったのだ。

 んきゃー!!!

 昨夜のいろんな証拠が、闇鍋状態で彼女の手に握らされたのである。

 セーターを編んでいたことや、タヌキ寝入り、キスと―― それから後のこと。

 カイトは、会社から帰ってワイシャツのまま。

 やー!!!!!

 自分の妄想。

 いや、この場合は現実にあったのだから「記憶」を、メイは追いやってしまおうとした。

 毛布の中で、ぐにゃぐにゃと身悶えてしまう。

 どうしよう。

 このまま毛布から顔を出して、彼と出会えないような気がした。

 まだ、全然心の準備が出来ていないのだ。

 いつもなら、カイトはまだ眠っているので、恥ずかしい証拠をつかまされてしまったとしても、朝食の準備をしている間なんかで呼吸を整えることが出来るのに。

 そうして、落ち着いた状態で彼を起こしにこられるハズなのだ。

 なのに、もう起きているなんて反則だった。

 そのカイトが。

 動いた。

 自分以外の意思で、ベッドがきしむのだ。

 えっと慌てて、亀のように毛布から首だけを出すと、カイトは裸のままベッドから降りるところだった。

 薄暗い世界で、彼の浅黒い肌はもっと暗く見える。

 筋肉や骨の影は、もっと暗い。

 どこに行ってしまうのだろうかと、途端に不安になるのだが、カイトの行き先がバスルームであるのを見てほっとする。

 いまの内に。

 メイは、枕元の明かりをつけると、パジャマの捜索を開始した。