少しの沈黙の後。

 カァッ。

 メイは、ベッドの上で赤くなった。

「あっ、その、それは……ううん、そうじゃないの…びっくりしたけど……嬉しかった」

 カイトは、目を見開いた。

「何だか…私のいないところでも……私を好きでいてくれるような、そんな気がして…」

 そんな気がして?

 カイトは絶句した。

 そんな気がするどころか、そのまんまだ。

 離れている時の方が、余計に彼女を感じたくてしょうがないのに、一体何を今更言い出すのだろうか。

 それとも一緒にいる時は、そこにメイがいるので、余計に好きに見えるように彼が演技しているとでも言うのか。

 言っちゃ悪いが。

 そんな器用な人間には、おそらくカイトは一生なれないのに。

「バッ…!」

 怒鳴りかけて、ぐっと口をつぐむ。

 言葉が足りない。

 時間が足りない。

 ゆっくり煮込めば痛くないのに、半生のままお互いをかじろうとするから、いつもこのザマだ。

 カイトが、もどかしく苛立つ気持ちを言葉に出来ないというのは、風船の中に熱風をどんどん送り込むようなものだった。

 見る間に大きくなる赤い風船。

「でも、カイトが先に眠ってたら…きっと私も…だから、すごくうれし……あっ」


 パァン。


 風船が―― 破裂した。

 その破片が消えるより先に、カイトはベッドに乗り上げて、彼女を抱きしめていたのだ。


 風船から叩き出された熱風に、一瞬で取り憑かれてしまった。