「ご、ごめんなさい…眠れなくて。で、でも! 眠ってないと怒られそうで……その…」

 子ダヌキのように小さくなりながら、メイはベッドの上に座り込んで言い訳を始めた。

 言い訳をしなければならないのは、カイトの方なのに。

 しかし、いまの彼はショックの方が、先に立っていたのだ。

 自分を慰めているところを、彼女に見られた―― まではいかないが、かなり近いくらいの痛手を感じていた。

 合わせる顔が、ねぇ。

 ベッドの側に立ちつくしたまま、彼女の方を見られないカイト。

 穴があったら入りたかった。

 恥ずかしくて後ろめたくて、とにかく大変な騒ぎだ。

 いたたまれない空気に、カイトはくるっと背中を向けた。

 メイが起きていると知っていたら、自分はあんなことを絶対にしなかっただろう。

 眠っていたからこその、キスになったのだ。

 理由は、『キスをしたかったから』

 ただ、それだけ。

 しかし、それを素直に伝えられるほど、彼の心は融通がきかなかった。

「あっ! 怒らないで…ごめんなさい」

 彼女の方は、カイトの背中に怒りでも感じたのだろうか。

 違うのだ。そうじゃないのだ。

 言葉に出せないものがイライラにすり替わって、カイトの身体に重くのしかかる。

「謝んな」

 しぶしぶ、彼はメイの方を振り返った。

 そうでないと、もっとひどい誤解をされてしまいそうだったからだ。

 それは困る。

「わりぃ…」

 謝るなら、自分の方なのだから。

「え?」

 しかし、彼女は面食らった顔になった。

 そこで、カイトが謝ってくるとは思わなかったのだろう。

「勝手に…おめーに……」

 それ以上は、言えなかった。

 彼女が、察してくれることを願うだけだ。