きっと

行かないほうがいい

私は

何度も言ったのに…

迷い込んだ

森の中は

生臭い

湿った 嘘宴


優しい腕が

私から抜けた時

幻惑を見たの…

あなたと踊る

あの子は 誰?


恋しい瞳は

私から放れて

差し伸べた手も

嫉妬の剣で

切り落とされた


どこへ行くの…

そっちは

碧濁の底なし沼


道連れなんて

かわいそう…

それとも

あの子も

淋しがりやさんなの?


何度も

あなたを呼んだけど

その度に

あの子が笑って

魔性の霧が

あなたを隠す


もう…

ふたりでいても

眩しい光に

絶えられないね…


裸足で歩く

棘の路は

あなたを忘れる

最後の快感


咲き乱れる

紅を道しるべに

ひとりで戻ればいい…



急がなくても

あなたには


罰は下るのだから…




予感の雨は

天からの罰なのか…


灰紫の雲影

胸騒ぎがした



私を見つめる

かわいい小鳥

似合わぬ声が囁いた

「コンニチハ…ドロボウサン…」

私を横目に鮮やかな羽を広げてみせた


濡れた翼を優しく抱かれた小鳥は

あなたがいないと

飛べない…と

かぼそい声で鳴いていた



懐かしい愛のカゴに戻った小鳥は

あなたに見つめられても

あなたに抱かれても

遠くの空ばかり眺めてた



あなたのカゴに

ふたつの愛はいらない…




あなたが見つめてくれるなら

この羽を抜いて

この身を彩りましょう…


あなたが抱いてくれるなら

この声が枯れるまで

歌いましょう…



扉を開けたのは

ある晴れた日

小鳥は翼を広げて

空へ消えた…



私は 行かない…

どこへも 行かない…


あなたに

見つめられながら

幸せを

さえずりましょう…





ねぇ…

一緒に泳ぎましょ…



美しい娘が 波間から手招きしてる



この海は荒れてるわ

きっと

あなたを歓迎しない



あの子は 人魚

丘の上には上がれない


だから

諦めて…


こっちに来ても

泡になって 消えるだけ






潮風のキスを受けたあなたは

魅惑の肌に触れたいと

私を残して

行ってしまった…



美しい人魚は 仮の姿

本当は

あなたを食べたいの



抜け殻になった

愛しい人は

青の藻屑になりました…


あなたを食べた人魚は

青の彼方へ

消えていった…



泡となって消えたのは


私とあなたの


遠い…あの日





いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子とバイバイ


そして私は

あなたと帰る



いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子とバイバイ


優しかったあなたが

冷たくなった…



いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子とバイバイ


あなたは私に

さよなら言った…



いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子が言った


ひどい人ね

許せないわ……




いつもの帰り道


あなたとバイバイした場所で

今は

あの子とバイバイ



いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子とバイバイ


あの道は暗くて恐い


あの子はいつも

あの角を曲がる…



いつもの帰り道


いつもの場所で

あの子とバイバイ


バイバイした角を曲がったら…


あの子は笑顔で走りだす



いつもの帰り道

いつもの場所で

あの子とバイバイ


あの角を曲がったら…

あなたが待っていた



ひどい人ね…

許せないわ……



あの道は暗いから気をつけて…



うしろの正面だあれ…