春休み最後の夜。

携帯が鳴った。

カツヤかな?

もう既に明日に備えて布団にもぐりこんで雑誌をめくっていた私は、慌てて机の上の携帯を手にとった。

「もしもし、カツヤ?」

「・・・俺。カツヤじゃなくて悪かったな。」

タイスケ??!

カツヤよりも低いトーンの野太い声が携帯の向こうに響いていた。

急に私の胸の奥に緊張が走る。

タイスケと話すのがなんだか怖い。

今までこんな風に思ったことなかったのに。

「友達」として、何言われるんだろう?って。

「こんな夜に何よ。」

なるべく平静を装って言う。

「遅くにごめん。時間も時間だし手短に言うな。」

「うん。」

喉の奥がゴクリと音を立てた。

「お前、K大どうすんの?男にうつつ抜かして、もうあきらめんのか?」

「へ?」

想像もしなかったことを言われたので、一気に緊張の糸がほどけた。

「短い間だったけど、お前も結構勉強のってたじゃんか。それとも別の進路見つけたのか?それなら話は別だけどさ。」

お前は私の進路指導の先生か!ってつっこみたくなるような神妙な口調。

なんなの、それ。