しばらく、じっと私を見ていたタイスケは、そのまま何も言わずに更衣室へ入っていった。

ふぅ。

呼吸するのも忘れていた。

びっくりした。


「本当にいいんっすか?」


ぽそりとカツヤがつぶやいた。

我に返ってカツヤの方を見た。

カツヤはじっと自分の足元を見ていた。

そんなカツヤが今はかわいいと思った。

こんなくだらない私のことを、そうやって真剣に思ってくれてるのが、素直にうれしかった。


「いいよ。全然いいよ。こちらこそよろしくお願いします。」

私は笑顔を作って、カツヤの肩をポンと叩いた。

カツヤはようやく私を見て笑った。

「よろしくお願いします。」

そして、二人で顔を見合わせて「ふふふ」と笑った。


きっと、更衣室で耳を澄ましているであろうタイスケを意識してないといえば嘘になる。

タイスケ。

あんたは私を女として見てくれなかったけど、こんなに女性として意識してくれる男性だっているのよ!

幸せになるから見てらっしゃい。


お互いの携帯のアドレスを交換して、私は更衣室へ向った。