「ただいま。」

「おかえり!今日もタイスケくんと勉強?」

お母さんがにこやかにキッチンから出迎えてくれた。

でも、今日はそんなにこやかさにイライラする。

「別に。」

私はお母さんの顔を見ずに自分の部屋へ向った。

「ちょっと、『別に』って答えになってないでしょ。タイスケくんと喧嘩でもしたのぉ?」

お母さんという人は、昔から本当に勘が鋭いっていうか。

それが、逆に鬱陶しい時もあったりするんだよね。

私だって放っておいてほしいときもある。

話たい時は自分から話すんだしさ。

少しだけお母さんに悪いナーと思いながら、そのまま無言で部屋の扉を閉めた。

「バタン」

と締まる音が、家中に冷たく響いた。

さすがにお母さんも今はそっとしておいた方がいいと思ったのか、キッチンの方へスリッパの音が遠ざかっていった。

重たいカバンを机の横にどさっと置いて、ベッドに倒れ込む。

「疲れたぁ。」

思わず声がもれる。

タイスケとあんな風に別れて、さすがに次会わす顔がない。

進路もまた一から考えなくちゃ。

せっかく勉強が楽しくなってきた時だったのに。

失恋の痛手が少しずつ癒されて、自分の進路目指して、久々に充実してた。

全部タイスケのお陰だった。