私は目をそらして、だまった。

「別に。お互いそれで納得してるんだし、ありでしょ。だってバイトだし。彼女がキスしろって言ったら普通にしますよ。」

「バイトって、そんなバイト聞いたことない!」

「それは、ナツミさんが知らないだけですよ。」

後輩にばかにされてるみたい。

なんだかムカムカしてきたぞ。

「あのさ、私今忙しいんだ。そんな話別に聞きたくもないし。用がないんなら帰ってくれる?」

そう言いながら問題集のページをめくった。

カツヤは無言のままだ。

ちょっときつかった?


「俺、やっぱそういうナツミさん好きだわ。」

もー。

何でそんなことを平気で言えるの?

それが不思議だわ。

私なんか、告白するってことは命がけな行為だっつうのに。

あー、カツヤとは全く重ならないって感じ。

なのに、心臓は外に音がもれるんじゃないかっていうくらいバクバクしていた。

そして、心のどこかで、そんな風に言われてることにクラクラ酔ってる自分がいた。


「俺の周りって、ナツミさんみたいな女の子、全くいないんですよね。男遊びしたいーみたいな感じの奴ばっか。俺ってそんなにちゃら男に見えるのかなーって。やっぱ、ナツミさんも俺みたいな男ってダメですか?」

そ、そんなことはないけど。

だけど、私とは全然違うタイプだし、逆に自分なんて相手にされないんじゃないかって思うような相手だもん。

寄りつきたくても寄りつかないよ。

私みたいなタイプは。


その時、背後で野太い声がした。

「お前ら、何やってんの。」