夢見心地のまま着替え終わると、更衣室はいつのまにか部員達であふれかえっていた。

現実にひきもどされる。

さてと。

私は自分の胴着を付け、お面と竹刀を持って一番先に道場へ向った。


一歩入って、一瞬足が止る。

道場には既にカツヤが一人、準備体操をしているところだった。

どうしよ。

いや、でもあれは単にからかわれていただけだから、私は気にすることはないんだし。

軽く深呼吸をして、いつものように道場に一礼して入っていった。

カツヤが私の方をちらっと見た。

慌てて目をそらす。

動揺しながら、自分の面と竹刀を床に置いて座った。

ドキドキしながら、もう一度ちらっとカツヤを見る。

カツヤは私には目もくれず、いつものように涼しい顔で準備体操を続けていた。

ふう。

なんなのよ。まったく。

私がこんなに動揺してどうすんの。

そう思った瞬間、頭を軽く叩かれた。

はぁ?!

叩いて来た方に目を向けると、タイスケだった。

「よっ。」

「な、びっくりさせないでよ。いきなり女性を叩くなんて、どうかしてるわ。」

「あ、ごめんごめん。お前も一応女性だったんだっけか。」

タイスケはテヘへとふざけた笑いを浮かべながら、カツヤの方へスタスタと歩いていった。