「何一人で真っ赤になってんの?」

私の頭上から野太い声が響いた。

見上げると、眉間にしわをよせたタイスケが、トレーにランチをのっけて立っていた。

「あ、いや。別に。ランチ、ありがとねー。」

ふいに戻ってくんなっての。

はぁ。びっくりした。

「窓の外になんかあるのか?」

タイスケはトレーを持ったまま窓の外に目を向けた。

「いや、何もないって、いいから早く食べよ。」

どうして、そんなに私が慌てなくちゃなんないのかわかんないけど、タイスケの袖口をひっぱって、無理矢理椅子に座らせた。

「変なやつ。」

ふう。

幸い、タイスケは窓の外を確認できなかったらしい。

別に、タイスケがその現場を見たからって、それがどうってわけでもないんだけど。

なんとなくね。

カツヤもかわいそうだし。

そういう光景を、今タイスケに見られちゃうと、なんていうか、気まずいような。

よくわかんないけど。


トレーにのったランチにようやく目を落とした。

本当にこれ一人前?

思いっきり食べ盛りの男子用じゃん。

でも、私は食べれるけどね。

「ナツミぃ。これ、量多いから、無理すんな。」

また言わなくていいような優しい言葉をかけてくるタイスケ。

「うん。無理はしない。」

とだけ言って、お腹ペコペコの私は夢中でランチにありついた。

全部食べ終わって、お茶を飲み干す。

タイスケがそんな私をじっと見ていた。

「お前、食欲男並なのな。」

くっ。

タイスケはうすら笑いを浮かべて、飲みかけのお茶を飲み干した。