校門を出ると随分薄暗くなっていた。

ふいにカツヤが私に言った。

「手、つないでもいい?」

「え?」

こんな状況の中で、あまりにも唐突な提案に一瞬言葉を失った。

「いや、もちろん変な意味じゃなくって、今はなんだかナツミさんのために何かできることはないかって。いち友人として。」

カツヤは少し寂しそうに笑った。

正直、今は誰かの温かさが欲しかった。

このままじゃ、あまりにも哀れな自分がふらふらと路頭をさまようような気がして。

そんな私の気持ちをカツヤはきっと察してくれたんだね。

普通に嬉しかった。

「男女の友情なんかないんじゃなかったっけ?」

少し意地悪い笑みを浮かべながら、私はカツヤの手をぎゅっと掴んだ。

カツヤは恥ずかしそうにうつむいて笑った。

「時と場合によりけり。」

「変なの~。」

思わず声をたてて笑ってしまった。


不思議だね。

今はカツヤといると、こんなにも素直に笑える自分がいる。


駅で別れるまで、私はカツヤの手のぬくもりを感じながら歩いた。