「この腕を掴んだのも衝動?」

涙をぐっと堪えながら聞いた。

「俺・・・やっぱ、ナツミじゃないと。」

「は?」

何言ってんのよ。

私はタイスケの腕をふりほどいた。

「帰るね。」

タイスケをベンチに残したまま、私はその場を離れた。

タイスケの言ってること、ほんとに訳わかんないよ。

何が言いたいの?

私に気を持たせて、何がしたいっての?



階段を上りきる。

ふぅ。

疲れた。

「ちーっす。」

耳元で声がした。

カツヤだった。

「どうしたの?」

「何となく気になって待ってた。」

もうどうでもよくなって、苦笑した。

「っていうか、俺も少し話があったし。」

「何?」

「帰りながら話すよ。」

今日はもう勘弁してって、言いたかったけど、タイスケと別れたこの後味の悪さを幾分マシに変えたかった。

「わかった。今日は遅くなれないから、帰り道だけね。」

「あ、うん。昨日はごめん。」

「いいって。」

相変わらずカツヤは優しいよな。