「じゃ、聞くけど、どうしてあんなことしたわけ?」

タイスケは前を向いてしばらく黙っていた。

「衝動。」

「衝動?意味わかんないし。」

「衝動だから、俺だってよくわからない。」

「ふうん。」

タイスケにはいつもこうやって適当にごまかされてばかりだ。

太刀打ちできない。

「で、話って何?そのこと?」

「それもあるけど。俺、やっぱりナツミとこういう形で気まずくなんの嫌なんだ。」

「だって、しょうがないじゃん。タイスケには彼女がいて、私はそんなタイスケを好きになって振られて、これまで通りにしろっていうのが無理あるんじゃないの?」

「そういうんじゃなく、っていうか、俺振ったっていう感覚ないし。」

「でも、一般的にはそういうの振ったっていうのよ。」

あー、うざい。

「俺は、お前といると楽しいし、元気でるし。友達っていう呼び方が気に入らないなら、もう絶対言わない。だから、とりあえず、俺と一緒に勉強しないか?」

「勉強って、受験勉強のこと?無理無理。それに、ハルナちゃんがそんなの許してくれるわけないじゃん。」

「俺は、お前みたいなうかつな事はしない。きちんとハルナに納得してもらえる自信ある。」

「私の気持ちはどうなんのよ。」

なんだか悔しくて涙が出そうになった。

「それは・・・。」

言葉に詰まるタイスケ。

やっぱりね。

「もういいって。普通にしてればいいんでしょ?普通にこれからも付き合うって。だから、これ以上そういう話はしてこないで。」

私はすくっと立ち上がった。

「待てよ。」

タイスケが私の腕を掴んだ。