更衣室から皆がいなくなったのを確認して、ゆっくりと外に出た。

薄暗い。

空を見上げたら、ほんのり赤紫色の空が静かに広がっていた。

「おつかれ。」

道場の台石に腰掛けていたのはタイスケだった。

「おつかれ。」

ため息まじりに言う。

もう、部員達は全員帰ったのか、その声以外には何も聞こえなかった。

「ハルナちゃんは?」

「先に帰った。」

「大丈夫だったの?心配そうに見てたけど。」

「大丈夫。」

何が大丈夫なんだか。

あんたほど女心がわかってない人間はいないっつうの。

「とりあえず、さっきのベンチいかね?」

私は黙ってうなずいた。


ベンチに腰掛けると、涼しい風が頬を撫でていった。

タイスケも私の横に座る。

「さっきはごめん。」

タイスケは唐突に謝ってきた。

「何が?」

「だから、さっき、ここでいきなりしちゃったこと。」

「はぁ。ほんと、あんたは何考えてんだか。人をおちょくんのもいい加減にしてよね。」

「おちょくってなんかない。」

タイスケは私の方を見た。

薄暗い中、妙にタイスケの目が光っていた。

ドキドキしてくる。

だめだ。

やっぱり、好き。

タイスケが好き。