これ以上、二人で並んでいることには耐えられなかった。

「ごめん、もういいかな?」

他人が聞いたらものすごく冷ややかに聞こえると思うトーンでハルナに言った。

「は、はい。すみません。」

ハルナは慌てて道場から出ていった。

そんなハルナと前後して、タイスケが道場に入ってきた。


はぁ。

もういや。

道具を置いて座ったすぐ前をタイスケが通っていく。

私の前で足が止った。

「部活の後、ちょっと時間くれる?」

嫌。

って言ったら?


でも、さっきのふざけたようなタイスケの態度の意味が気になっていた。

その意味を教えてくれるんだろうか。

「はい。」

わざと他人行儀な返事をした。

タイスケはそのまま自分の定位置に歩いていった。

何事もなかったかのように。

道場の入り口に立っているハルナをちらっと見る。

ハルナはそんなタイスケの後ろ姿を愛おしそうに見つめていた。