改札に定期を入れて、出た。

ゆっくりと顔を上げると、お母さんが両腕を組んで待ちくたびれた顔をして立っていた。

うわ。

怒ってる。

「た、ただいま。遅くなってごめん。」

お母さんの前まで来ると、小さな声でつぶやいた。

お母さんは何も言わず、私の頭をくしゃくしゃっとした。

「心配したわよ。ほんとにもう。電話の一本くらいよこしなさい。」

「すみません。僕のせいで、ご心配おかけしました。」

私の後ろから、カツヤが深々と一礼した。

「え?」

お母さんは驚いた顔で私とカツヤの顔を交互に眺めた。

「あの、どちら様でしょう?」

お母さんはカツヤに尋ねた。

「あ、僕はナツミさんの所属する剣道部の後輩で、カツヤと言います。初めまして。」

カツヤは固い固い挨拶をして、また頭を下げた。

かなり、緊張してるっつうの。

その時、お母さんの後ろで声がした。

「カツヤんちにいたの?」

え?

この声。

もしかして・・・

でもどうして?!

声のする方を見上げると、タイスケが立っていた。