カツヤに身を任せて、雨の中走った。

あまりの雨に目の前の風景もかすんでみえる。

自分が今どこにいるのか、どこを走っているのかすらわからない状態。

けたたましい雨音の向こうでカツヤの声がうっすらと聞こえた。

「とりあえず、入ろ。」

そこは、カツヤの家だった。

結局、また戻ってきてしまったんだね。

でも、こんなびしょぬれでカツヤの家に入るなんて、大丈夫なの?


家の中をぬらしてしまうこと以上に、別の不安が首をもたげていた。


こんな格好のまま、まさか家の中に居れるわけないよね?!


玄関の扉が閉まる。

雨音は玄関の向こうに遠のいた。

そして、またものすごい音で雷が鳴り響いた。

思わず耳を塞ぐ。


カツヤが私の顔をのぞき込んだ。

「大丈夫?」

「うん。でも、雷は嫌い。」

「俺、結構雷好きなんだよね。」

「ええ?どうして?怖いじゃんか。」

「そう?雷の音って聞いてるとスカッとしてくんだよね。それよか、とりあえず上がってよ。」

こんなびしょぬれなのにきれいな玄関に上がっていいの?

「でも、廊下ぬれちゃうよ。」

「すぐタオルと着替え持ってくるから。そこで待ってて。」

カツヤは思い出したように家の奧へ走っていった。