このままじゃ、私の気持ち、また言えなくなっちゃう。

「わ、私も。」

カツヤはこちらを見た。

「私もカツヤと会うたびに、少しずつ気持ちがゆれてることもあった。キスしたのは、やっぱりカツヤとの関係を続けたいって思ったから。これはその時の正直な気持ちだよ。」

「でも、いずれにせよ俺の立場がタイスケさんと逆転するなんてことはなかった・・・んでしょ?」

「・・・。このまま何もなく付き合っていけば、そうなることだってあったかもしれない。」

「ほんとに?」

「ほんとだよ。だって、カツヤと別れようと思えばいつでも別れられたけど、それができなかったんだもん。カツヤのこと好きになりかけてた。」

カツヤは苦笑しながらまた前を向いた。

「だけど。」

少し深呼吸する。

「こないだマドカと話してて、なんだか自分がすごく嫌になった。こんなに、カツヤのこと大好きで大事に思ってるマドカを前にして、私ってなんて中途半端な気持ちでお付き合いしてるんだろうって。マドカにすら、自分の本心は言えなかった。とても言える状態じゃなかった。悲しくなったんだ。」

「マドカ・・・?」

「マドカは自分の気持ちを押し殺して、カツヤの好きな相手が私ならしょうがないねって笑ってた。私のために笑ってたよ。」

その時、空が一瞬パーッと明るくなった。

そして、ゴロゴロピッシャーン!という地響きのような雷の音が響いて、スコールのような雨が私たちをたたきつけ始めた。

「あ、やべ。」

カツヤは空を見上げると、私の肩を抱いて走った。

走りながらカツヤが私に何か問いかけたけど、あまりの豪雨の音にかき消されて何言ってるかわからない。

とりあえず、わかんないけどうなずいた。