横で、タイスケの肩が一瞬ゆれた。

「好きだから付き合ってんじゃないの?」

タイスケが少し緊張した声で聞いてきた。

「いや、なんていうか、好きになれそうな気がして付き合ったっていう方が正しいんだよね。実は。」

タイスケの喉がごくりと鳴った。

「まじで?」

「うん。」

カツヤに告白されて、気持ちがゆれたのは確か。

だって、あんなに格好いいんだもん。

それに、性格だって悪くない。

私のこと大事に思ってくれてるのもすごくわかる。

一緒にいたら、幸せだなって思う瞬間もあったし。

でも、やっぱりずっと埋まらない何かがあった。

それは、タイスケ。

あなたの存在があったからなのよ。

心の中で静かに話した。

もちろん聞こえるわけもない、私の心の中だけの言葉。

タイスケは何も言わず、じっと自分の足のつま先を見つめていた。


「おつかれーっす。」

後輩達が私たちの前を元気に横切っていった。

「おう、おつかれー。」

タイスケはいつものように明るく手をふって、後輩達を見送っている。

私も右手を挙げて、少しだけ笑った。