その日は1日落ち着かなかった。

色んな視線を感じる感じる・・・。

こんなに視線を集めた日って、生涯初めてじゃないかしらと思うほどに。

当然のごとく、授業にも身が入らないわけで。

部活にも身が入らないわけで。

そそくさと帰っていくカツヤの背中を見送ると、思わず長いため息がもれた。

新マネージャーのうち、カツヤ目当ての子は今日は欠席。

っていうか、もう辞めちゃったかも?

さすがにこんなけ広まっちゃ、カツヤや私と会わせる顔がないんだろう。

なんとなく、脱力感。

部室前のベンチでぼんやり腰を下ろしていた。

「おう。」

前からタイスケがやってきた。

「あ、昨日はありがと。」

「あいつ、今日はさっさと帰えっちまったな。」

「あいつって、カツヤのこと?」

「しかいないだろう?」

「ああ、うん。ちょっと話したかったんだけどさ、今日は用事があるんだって。」

「ふぅん。」

タイスケは興味なさそうな顔で私の横に座った。

「で、例の従妹さんとは連絡ついた?」

私はぶんぶんと首を横に振った。

「今日も、朝から何度かメールしてるんだけど、全く音沙汰なし。」

「何かにおうよな。」

「え?臭い?!私?」

焦って、自分の体を確かめる。

「ばかか、お前。その臭いじゃねーっての。」

タイスケが笑った。


久しぶりに見たタイスケの笑顔。


なんだか、心がホッとした。

私もそんなタイスケを見て笑った。


「ナツミ、俺に久しぶりに笑ったんじゃない?」

タイスケも心なしか嬉しそうだった。

「ほんとだね。なんでか最近私たちってぎすぎすしてたもんね。」

「なんでかって・・・理由は明確だけどな。」

「は?」

「っていうか、さっきの話の続きだけどよ。カツヤと例の従妹さん、二人の関係ってなんとなく気になるよなーってこと。昨日の今日だろ?二人共と話できないって、なんかおかしくない?」

「そ、そっかな。」

「おめえはいつだって鈍感っちゅうか、にぶいっつうか。それで結局頭打たれるタイプだろ?もう少し自覚しろっての。」

「ひどい言い方!」

「だって、本当のことだろ。」