週末。

待ち合わせの時間に少し遅れそうだった私は、息を切らして走っていた。

久しぶりに会うマドカとの待ち合わせ時刻は、あと5分。

どんなに急いだって、5分であの場所までたどり着けるわけがない。

どうしよう?

うっかり家を出る時間勘違いしちゃってたんだよね。

このままじゃ、確実に15分以上は遅刻だ。

ふぅ。

角を曲がって足を止めた。

マドカの携帯に電話すりゃいいじゃん。

そんな簡単なことを今頃になって気づく。

ばっかだね。私って。

一人で苦笑しながら、バッグから携帯を取り出した。


「ナツミさん。」

後ろから呼び止められる。

振り返ると、自転車に乗ったカツヤが私の横で停まった。

「あ、カツヤ。」

「これから、従妹さんとの待ち合わせだっけ?」

「うん。今日は予定狂わせちゃってごめんね。」

「いいって。久しぶりなんでしょ?ゆっくり楽しんできて下さい。」

「ありがとう。カツヤは?」

「あ、今から家に帰るとこ。」

「どっか行ってたの?」

「ああ、うん。ちょっと昔の友達と会ってた。」

「そっか。あ。」

「ん?」

「もしさ、急いでないんなら、岬公園まで自転車で飛ばしてくれない?」

「え?待ち合わせ場所?」

「そうなんだけど、このままじゃ絶対時間に間に合わなくってさ。自転車だったら、すぐかなって思って。」

「そうなんだ。じゃ、どうぞ、後ろに乗って下さい。」

カツヤは優しく笑うと自転車の後ろを親指で指した。

「サンキュウ。」

私はカツヤの後ろにまたがった。