玄関の扉を開ける。

「ただいまあ。」

なるべく普段通りの声のトーンで言う。

だって、今日は私の初キスの日。

なんだか、何でもお見通しのお母さんにばれてしまいそうでドキドキする。

私って嘘つこうとしても、絶対顔に出るし。

「おかえりぃ。」

お母さんはそんな私の気持ちなんてお構いなしで、キッチンから出迎えてくれた。

いつものように。

思わずお母さんから目をそらす。

「今日は、寄り道でもしてきたの?塾もないのにちょっと遅かったじゃない。」

一番触れてほしくないことを、これまた淡々と聞いてくるお母さん。

「あ、うん。ちょっと友達とお茶してきた。」

「ふぅん。」

ちらっとお母さんの方を見ると、少し半笑いのお母さんの顔が飛び込んできた。

うっ。

何か察知してやがる。

「じゃ、着替えてくるね。」

私は早足で自分の部屋へ向かった。

「はいはい。」

敢えて何も言わないお母さん。

それはそれで、微妙なんですけど。