「ふふっ」

耳元でカツヤが小さく笑った。

ゆっくりと目を開ける。

カツヤは前髪をかき上げて、寂しそうに笑っていた。

「ナツミさんって、嫌になっちゃうくらい嘘がつけないタイプだよね。」

「え?」

「キス、俺としたくなんかなかったんでしょ?」

「それは・・・。」

「じゃ、したかった?」

カツヤはいたずらっぽい表情で私に顔を近づけた。

「いや・・・。」

思わず顔を背けて口からこぼれた。

「でしょ?」

カツヤも私から顔を離して苦笑した。

「ごめんね。」

「謝られたら余計みじめになるから。」

「うん。」

しばらくの沈黙。

私とカツヤの間に、冷たい風が吹き抜けていく。

ここは年上らしく何か切り出さなきゃって、思い切って口を開いた。

「カツヤは、モテるのに、どうして私なの?」

って聞いてみた。

これは、ずっと思っていたこと。

もっとかわいくて、器量もよくて、頭もよくて、性格もいい子なんていっぱいいるじゃない。

よりによって、こんなかわいげのない、しかも自分を不安にさせるような相手を選ぶなんて。