タイスケが貧乏揺すりを始める。

きっとイライラして勉強に集中できないんだろう。

「お前さ。勉強したかったんじゃないの?」

「そうよ。」

「だから、俺が今日ここでカツヤを説得してやったんだろが。」

「そうだよ。」

「もっと、ありがたいなーって気持ちはないわけ?」

「ありがたいなーって思ってるわよ。」

「そうかな。」

「そうよ。」

「俺、なんかお前にいいように使われてない?それか、やっぱお前、カツヤと一緒に勉強したかったか?」

急に何つっかかってんのよ。

これだから、微妙な女心が理解できない男は面倒臭いっての。

「そんなわけないじゃない。全然そんなこと思ってないし。本当にありがたいと思ってるもん。もういいじゃん。お互い勉強するためにここにいるんだし、もっと集中しようよ。」

タイスケは目を丸くして、そして眉間にしわをよせた。

「ナツミ、お前なんだか変ったよ。」

「そう?」

「おう。変った。」

「どこが?」

「彼氏ができたからかどうかしんないけど、偉そうな感じだしさ。全くかわいげなくなった。」

ムッ。

右目の横辺りがピクンと痙攣する感覚。

「そ、それどういう意味よ。そんなことないわよ。タイスケの方こそ、なんだか変ったんじゃない?」

「俺のどこが変ったんだよ。」

「なんていうか、ちょっと言い方きつくない?もっと他に言い方ないわけ?」

「俺のどこがきついんだよ。」

ふぅ。

ここは図書館だっていうのに。

だんだん声のトーンが大きくなってるタイスケ。

自分で気づけっての。

「もういい。また今度話すわ。今は勉強しよ。」

私は集中できないのがわかっていながら、広げた問題集に視線を向けた。